2016.3.30 ,,

マーケティングで大切なことは全部デアゴスティーニが教えてくれる【行動経済学の7つの効果】

この記事は公開日から1年以上経過していますが、普遍的なテーマを扱っているので内容は古ぼけていないはずです

カモノハシ

デアゴスティーニ♪

コアラ

創刊号は890円。

週刊 城を建てる

カモノハシ

いやぁ、ワクワクしますね~♪
デアゴスティーニ。

コアラ

って、「ワクワクしますね~♪」じゃねーよ。
思わずノっちゃったけど、なに勝手に経費扱いで買ってんの。
毎月の俺の茶菓子代(ユーカリの葉)に響いたらどうすんだよ。

彼らは、とある不思議な組織「ズーズル」に所属するマーケティングミステリー調査班、通称MMR。
MMRはその名の通り、この世の中にある“成功している企業のマーケティングの不思議”を調査・解明するチームである。

MMR

カモノハシ

毎週のように自己啓発セミナーに通う、自己投資に余念が無い天然タイプ。
まだまだ自分で思考する能力が足りてないのを、「考えるより行動する」と言い張って思考放棄しがちなところがある。

コアラ先輩

カモノハシの先輩で理屈屋、偏食家の大食漢でエンゲル係数はめっぽう高い。
後輩であるカモノハシによく毒づくが、実は彼の「とにかく行動力がある点」には、密かにあこがれと敬意をもっている。

カモノハシ

いやぁ、見てたらなんかどんどん欲しくなっちゃって・・・『週刊 城を建てる』
気付いたらもう定期購読6ヶ月目に突入ですよ。

コアラ

・・・ふ~ん。
しっかし、お前みたいな脳筋系自己啓発マニアがこういうクリエイティブなモノに手を出すとはねぇ。

カモノハシ

「脳筋系自己啓発マニア」って、言い方ひどくないっスか!

・・・でも、そうなんですよ!
デアゴスティーニは、完成までのプロセス、そのクリエイティブがたまらんのですよぉ!

コアラ

「読書と人脈構築だけが最高の自己投資ですよ!」とか言い続けてたコイツがこういうのに手を出すとは・・・

これはちょっと気になるな・・・調べてみるか。

数時間後

コアラ

カモノハシよ・・・調べたところ、どうやら君はデアゴスティーニに隠された超ロジカルなマーケティング戦略にハマってしまったようだぞ・・・!

MMRカモノハシナワヤ風


コアラ

というわけで、みなさんこんにちは。

今回は、冒頭でカモノハシ君がハマってしまった、あのデアゴスティーニが行っている超論理的なマーケティング手法について解説してみたいと思います。

あなたは、一度は以下のようなテレビCMを目にしたことがないでしょうか?

あるいは、書店に行けばたいていデアゴスティーニ社の本は、趣味や科学のコーナーにいくつか平積みされているので、見かけたこともあると思います。

そんな、誰もが知っているデアゴスティーニ社は、1901年にイタリアで創立された出版社。
百科事典や全集などを分けて出版するという「分冊(パートワーク)」のジャンルを確立し、このジャンルにおいては、全世界シェアのなんと50%を占めているという企業です。

「2014年 世界の出版社売上高ランキング」を見てみると、日本の集英社や講談社を抑えて13位にランクインしており、その売上高は13億6,700万ドル(USD)となっています。

The World’s 57 Largest Book Publishers, 2015

そんな、世界の出版社の中でも有数の売上高を誇るデアゴスティーニ社のマーケティング手法は、消費者の心理を巧みに捉えた、きわめてロジカルなものだったのです。

デアゴスティーニ社のマーケティングは「行動経済学」に基づいて考えられている!?

デアゴスティーニ社のマーケティング手法は、「行動経済学」に基づいて考えると、腑に落ちる点がたくさんあります。

「行動経済学」とは、“人間はもっとも合理的な選択をする”という前提の元に語られる、古い経済学の理論に、“実際の人間は時に不合理な行動をする”といった、「心理学」の要素を加味して確立されてきたものです。

では、そんな行動経済学に基づいた、デアゴスティーニ社のマーケティング手法に見られる、以下の「7つの効果」について確認していきましょう。

  1. 単純接触効果(ザイアンスの法則)
  2. 価格のアンカリング効果
  3. 希少性の原理
  4. イケア効果と投資した時間への価値
  5. 授かり効果(保有効果)
  6. コンコルド効果・埋没費用(サンクコスト)
  7. マグニチュード効果(マグニチュードエフェクト)

1. 単純接触効果(ザイアンスの法則)

デアゴスティーニのメインの宣伝方法であるテレビスポットCMは、どんなシリーズの場合でも、創刊日の2週間前から前日まで放送されています。

消費者はこのCMを、同じような内容だとしても繰り返し目にします。
すると、なぜか自然と商品に対する好感度が高まっていき、やがて良い商品だと思ったり、欲しくなったりします。

これは、アメリカの心理学者ロバートザイアンスが提唱した効果で「単純接触効果(ザイアンスの法則)」と呼ばれています。

テレビを見ている

この単純接触効果は、テレビCMに限った話ではありません。

例えば、最初は見込み客に相手にされなかった営業マンが、毎日のようにお客の元に足を運んでいると、いつの間にか仲良くなって、「見込み客」から「顧客」になっていたというような話は、少なからず聞いたことがあると思います。

このように、何度も情報に接触させるということは、マーケティングにおいて重要な効果があるといえます。

(ただし、既に消費者が会社や商品に対して悪いイメージや予備知識を持っている場合は別)

2. 価格のアンカリング効果

デアゴスティーニの創刊号は、必ず2号以降の価格よりも安く半額~1/4程の値段設定になっています。

そしてCMで価格を表示する際は、まず通常の価格が表示され、その後割引された創刊号の価格が表示されます。

価格のアンカリングのイメージ

すると消費者は、最初に見た「通常価格」を基準と考えるため、創刊号の割引価格をよりお得に感じます。

このように、最初に提示された数字を基準として、その後にみる数字の印象が変わってしまう効果のことを「アンカリング効果」といいます。

ちなみに、実際は通常価格での販売実績が無かったり、明らかに市場に流通している価格とかけ離れた価格表示を行うと、「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)における「二重価格表示」にあたり、違法になります。

一時期、とあるネットショップでそんなことが話題になりましたが、デアゴスティーニの場合は実際に販売実績も流通もあるので、問題ありません。

3. 希少性の原理

「この機会を逃せば二度と手に入らないかもしれない」と、思うと人はその商品を欲しくなります。

デアゴスティーニの創刊号は書店などで多くみかけるものの、実は2号以降は、号数を重ねる毎に発行冊数が減っていきます。
これは、過去のデータから継続して購入する確率を算出しており、余分な在庫を作らないためでもあります。

しかし、消費者はこのように数が少ないということを知ると、「いましか買えない」「中古で出回らないかもしれないから、これを逃すと完成(コンプリート)できない」などと思い、買いたくなってしまいます。

このような現象を「希少性の原理」と呼びますが、この理論はデアゴスティーニに限らず、ほとんどの商品やサービスに当てはまります。

希少な物

“数が少ない物”は、“いつでもどこでも手に入るもの”よりも貴重で価値(満足度)が高いのです。

4. イケア効果と投資した時間への価値

人は、自分で労力をかけて作ったものに対して、出来合いの完成品よりも高い価値をつけることがあり、これを「イケア効果」と呼びます。

「イケア効果」はその名の通り、自分で組み立てるイケアの家具にちなんで、ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ノートン氏らによって提唱されました。

イケア効果を持つ商品の例としては以下のようなものがあります。

ホットケーキミックス
水を混ぜるだけの商品よりも、卵を加える一手間が必要な商品の方が高い売上につながった。

知育菓子
「ねるねるねるね」に代表される知育菓子は、「食べられる」に加え、「自分で作ること」と「色や状態の変化」が加わって、より肯定的な体験をすることができる。

イケア効果 | イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ

まさしく、デアゴスティーニの模型商品は、“自分で労力をかけてつくる”という点でこのイケア効果を含んでおり、号数を重ね自分で組み上げていくごとに、その商品価値を高めていくといえます。

また、“途中で完成を諦めて似たような完成品を買う”という行為を抑止する効果もあるかもしれません。

プラモデル、イケア効果のイメージ

さらに、“時間をかけてつくる”という点に着目しても、気付くことがあります。
それは、「人は優れた技術よりも“時間をかけた”という“目に見える努力”を高く評価する」傾向があるということです。

例えば、家のカギを無くして困っている時、業者に3秒でカギを開けてもらうより、3分かけて開けてもらった方が、顧客の感じる満足度は高くなるといいます。

また、夜遅くまで残業して“時間をかけて仕事している”従業員の方が、短時間で素早く成果をあげる従業員より頑張って見え、あまつさえ高く評価してしまうのも、この効果があるためです。
(査定方法が明確に定まっていない場合にありがちですが)

ということで、「自力」で「時間をかけて」つくるデアゴスティーニの商品が、満足度が高くリピーターが多いといわれるのも、納得の結果なのかもしれません。

5. 授かり効果(保有効果)

人は、自分が一度所持・保有した物に対して、市場に出回っている新品の物よりも、高い価値をつけることがあり、これを「授かり効果(保有効果)」といいます。

これは、人は商品やサービスを手にした時の嬉しさよりも、失う時の悲しみの方が大きいので、その差を埋めるために「損失回避性」というものが働き、授かり効果(保有効果)に繋がるといわれています。

授かり効果(保有効果)の実例として、以下のような実験があります。

アメリカの大学生でこんな実験が行われました。
学生を2つのグループに分け、片方のグループに大学のロゴ入りカップをプレゼントしました。

そこでカップを手に入れた人は何ドルならそのカップを手放してもいいか?もっていない人はいくらならカップを手に入れたいと考えるか? という質問をしたのです。

するとカップ所持者は平均5.25ドル以下では売ろうとせず、もたない人たちは平均2.75ドル以上では買おうとしなかったのです。

一度手にすると商品の価値が上がる、不思議な「保有効果」

本来、大学のロゴが入ったマグカップなど、希少でもない単なる雑貨品です。

それでも、一度自分のものとして保有したことで愛着がわいてしまい、カップを持っていない人が算定する価値に比べ、倍以上の開きがでてしまうんですね。

マグカップ

デアゴスティーニの商品も、“完成までずっと保有しつづける”ことを考えれば、前述した「投資した時間への価値」も相まって、その商品価値をさらに高めることになるといえます。

6. コンコルド効果・埋没費用(サンクコスト)

カモノハシ君は冒頭で、創刊号から6ヶ月分、すでに購入した状態だと言っています。

例えばもし、「ここで継続購入を辞める」という選択肢や「7ヶ月目以降の費用より安い完成品の城を買う」という選択肢があったとしても、どちらも選ばず継続購入するでしょう(特別な事情が無い限りは)。

というのも、ここで継続を辞めると「これまでかけた6ヶ月分の費用が無駄になる」と感じてしまうからです。

このように、「これまで続けた投資を無駄にしたくはない」という思いが働いて、以降も継続をやめられない状態になってしまうことを「コンコルド効果」といいます。
※別名、埋没費用(サンクコスト)とも

「コンコルド効果」の名称は、学者ドーキンスによって、「イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機コンコルドの失敗」に喩えて、表現されたものです。

旅客機

コンコルドは、開発中から市場ニーズの変化や維持費の高さなどの理由により、完成しても赤字は免れないことが分かっていました。
しかし、それでも開発への投資をとめられず、結果として商業的に大失敗しコンコルドは2003年に全機退役となりました。

コンコルド効果とは

よくよく考えれば「過去の投資はすでに過ぎ去った出来事」なので、これから行う別の投資や意志決定には関係なく、関与させない方が合理的です。

しかし、「ここで辞めればこれまでの投資が無駄になってしまう」という思いが合理性よりも優先され、継続してしまうんですね。

7. マグニチュード効果(マグニチュードエフェクト)

デアゴスティーニは創刊号からすべて揃えると、完成までに数万円~10数万円の費用がかかります。

しかし、一回数百円~数千円の“分割払い”にすることで、人はその合計額の大きさを正確に捉えられなくなります。
これは「マグニチュード効果(マグニチュードエフェクト)」と呼ばれる現象で、レーベンシュタイン教授らによって提唱されました。

George Loewenstein-Social and Decision Sciences

分割払いのイメージ

人は、小さな金額を提示されると、それが分割だとわかっていても、一括払いの時の金額よりも安く感じて支払いやすくなるといいます。


このように、デアゴスティーニ社のマーケティングは、行動経済学に基づく「7つの効果」を組み込んだ、きわめてロジカルなものであることが分かりました。

コアラ

・・・というわけで、これが今回、俺が調べた調査結果だ。
カモノハシ、君は予想通り不合理に、デアゴスティーニのマーケティング手法にハマってしまったということだね。

カモノハシ

・・・そ、そういえば、最初はよくテレビCMを見かけてて、なんとなく欲しくなって、書店に行ったときについ手に取っていました・・・。

コアラ

まさしく、デアゴスティーニのターゲットを代表するかのような消費者行動だね。

まぁ、こんな風に行動経済学のことをひっぱりだして書くと、なんだかまるでダマされたような印象を受けるかもしれないけど、それだけに着目してはいけない。

デアゴスティーニには、以下の5つの商品カテゴリがあるけど、商品開発の段階から徹底したリサーチを行っていて、創刊したシリーズは100号を超えるものでも、必ず全て最終号まで発行しているんだ。

デアゴスティーニの商品カテゴリ

  1. 学習して上達を目指すコースもの
  2. そろえると百科となるデータファイルもの
  3. 集めていくコレクションもの
  4. ビルドアップ(組み立て)もの
  5. DVD/CD

カモノハシ

途中で発行中止したことがないんですね・・・!

コアラ

商品の質を高めて、常にリピーターやファンを増やし続ける。
これは相応の企業努力がなければできないことだ。

カモノハシ

確かに・・・商品の質が悪ければ継続して売れないし、売れなければ最後まで発行することもできない。

つまり、それだけたゆまぬ努力をしている企業なんですね。

コアラ

そういうことだね。

ちなみに、酒やギャンブルなど、“ただ浪費する趣味”と違って、こういったクリエイティブな趣味を持つことは、ストレスを解消し集中力を高め、「意志力」の向上に繋がるみたいだよ。

「意志力」に関しては今回の調査の趣旨とはズレるので割愛するけど、気になったら「スタンフォードの自分を変える教室」っていう本を読んでおくとイイ。

米国心理学会は最も効果的なストレス解消法として、「エクササイズやスポーツをする」「礼拝に出席する」「読書や音楽を楽しむ」「家族や友だちとすごす」「マッサージを受ける」「外へ出て散歩する」「瞑想やヨガを行う」「クリエイティブな趣味の時間をすごす」などの例をあげています(最も効果が低い方法は、ギャンブル、タバコ、お酒、やけ食い、テレビゲーム、インターネット、テレビや映画を2時間以上観る、などです)

スタンフォードの自分を変える教室(P.207)

カモノハシ

おぉ・・・そうなんですよ!
まさしく、城を組み上げていくたびに、ボクのクリエイティビティが燃焼し、集中力と意思力が高まっていくのを感じるんですよねー。

それにしても、短時間でよくここまで調べましたね。
さすがコアラ先輩だ。

コアラ

フッ・・・
たいしたことは無いさ。

カモノハシ

いやいや、ご謙遜を。

・・・ところで、今組み上げてるこのパーツなんですけど、どこに組めばいいかわかんないんですよねー。
コアラ先輩なら、きっと分かると思うんですけど・・・。

オーパーツ

コアラ

!!

・・・し、調べてみよう。

数時間後

カモノハシ

どうですか?

MMRコアラキバヤシ風

週刊 城を建てる(仮)

img-deago2

img-deago3

答え:パチモンだった

今回、コアラ先輩が調査に使った資料

書籍

人は勘定より感情で決める  -直感のワナを味方に変える行動経済学7つのフレームワーク

ファスト&スロー(上)

これならわかるよ!経済思想史

マンガでわかる行動経済学

マーケターの知らない「95%」  消費者の「買いたい! 」を作り出す実践脳科学

新生MMR迫りくる人類滅亡3大危機!! (講談社コミックス)

Webページ

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2016.3.30 ,,

今回はデアゴスティーニの超ロジカルなマーケティング手法について、MMRがお送りしました。
ただ、このマーケティング手法はデアゴスティーニに限った話ではありません。

世の中で流行っていたり、長く売れ続けてる商品やサービスには、ここにあげた効果のいくつかが、単体または組み合わされるなりして反映されていることが多いと思います。

「あの商品は何故売れているのだろう?」と感じたら、デアゴスティーニに照らし合わせて考えてみると、その理由が見つかるかもしれません。

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